「最近、疲れがなかなか取れない」
「ちょっとしたことでイライラする」
「以前はもっと頑張れたのに……」
40代、50代になると、こんな変化を感じることはありませんか?
でも、病院に行くほどでもないし、年齢のせいだから仕方ない。
そう思って、毎日の仕事や家事を頑張っている女性も多いのではないでしょうか。
実は、こうした更年期の悩みは、今に始まったことではありません。
女性たちは何百年も前から、心と体の変化を経験してきました。
ただ、その原因が十分に理解されず、長い間、本人の性格や気持ちの問題として捉えられることもあったのです。
ところが今、その考え方が大きく変わろうとしています。
更年期は、女性が一人で我慢するものではなく、社会全体で考えるべき健康課題へ。
今回は、更年期の歴史をたどりながら、なぜ今、女性ホルモンについて知ることが大切なのかをお伝えしたいと思います。
昔の女性たちは、更年期をどう捉えていたのでしょうか?
閉経の前後に、女性の心や体に変化が起こることは、古くから知られていました。
しかし、その仕組みが科学的に解明されていなかった時代には、今のように女性ホルモンや自律神経と結びつけて考えることはできませんでした。
当時の医学には、女性の体調の変化を精神状態や女性特有の性質と結びつける考え方もありました。
今なら、女性ホルモンの変化や睡眠、ストレスなど、さまざまな要因を考えることができます。
でも、そうした知識がなかった時代には、女性自身も不調の理由がわからずに過ごしていたのかもしれません。
ここから、更年期に対する考え方がどのように変わってきたのか、歴史を見ていきましょう。
1821年|「更年期」に名前がついた
今から約200年前。
フランスの医師シャルル・ド・ガルダンヌが、1821年に「ménopause(閉経)」という言葉を用いました。
それまでにも閉経についての記録はありましたが、医学の中で名前が与えられ、研究の対象として扱われるようになっていきました。
とはいえ、名前がついたからといって、すぐに女性の不調が正しく理解されたわけではありません。
当時は、女性の体や精神状態について、現在とは大きく異なる医学的な考え方も存在していました。
更年期という言葉が生まれても、女性たちが十分な理解や支援を受けられるようになるまでには、長い時間が必要だったのです。
1930年代|女性ホルモンと更年期の関係がわかり始める
20世紀に入り、医学の研究が進むと、女性ホルモンの働きが少しずつ明らかになっていきます。
1930年代には、更年期の変化とエストロゲンの減少を結びつける医学的な考え方が広がりました。
エストロゲンは、女性の体のさまざまな機能に関わるホルモンです。
月経や妊娠に関係するだけでなく、骨や血管、脳などにも作用しています。
そのため、更年期にエストロゲンが大きく変動しながら減少すると、さまざまな心身の症状が現れることがあります。
つまり、更年期の不調は、単に気持ちの持ちようだけで説明できるものではないということです。
ただし、すべての不調が女性ホルモンだけで決まるわけではありません。
生活環境やストレス、睡眠、ほかの病気なども関係しています。
女性の体の変化を、医学的な仕組みから理解する。
そのための研究が、少しずつ進んでいった時代でした。
1970年代〜1990年代|女性の一生を通した健康へ
その後、更年期医療の研究はさらに進みました。
1970年代には国際閉経学会(IMS)が設立され、更年期に関する国際的な研究や情報交換も発展していきます。
そして、女性の健康を月経や妊娠・出産だけでなく、一生を通して考える視点も広がっていきました。
更年期は、ちょうど人生のさまざまな変化が重なりやすい時期です。
仕事では責任ある立場になり、家庭では子育てや親の介護など、いくつもの役割を担うこともあります。
そんな時期に、女性ホルモンの変化による不調が重なることがあります。
医学的な理解が進んでも、すべての女性が必要なケアを受けられるわけではありません。
「仕事を休めない」
「家族に心配をかけたくない」
「これくらい我慢しなければ」
こうした思いから、自分の健康を後回しにする女性も少なくありませんでした。
そして、それは今の日本にも通じる課題ではないでしょうか。
2024年|更年期が社会全体の経済課題として注目される
ここで、大きな転換点となるデータが公表されました。
2024年、経済産業省は、女性特有の健康課題による社会全体の経済損失を試算しました。
その金額は、なんと……
年間 約3.4兆円
この数字には、月経随伴症、更年期症状、婦人科がん、不妊治療に関係する労働損失などが含まれています。
そして、そのうち更年期症状による経済損失は、
年間 約1.9兆円
と推計されました。
これは、女性の健康課題が、本人の生活だけでなく、働き方や企業活動、社会経済にも関係していることを示す数字です。
更年期の不調によって、仕事のパフォーマンスが低下したり、働き続けることが難しくなったりするケースもあります。
これまで「個人の体調の問題」として片づけられがちだったことが、実は社会全体で考えなければならない問題だったのです。
女性が元気に働き続けられる環境をつくることは、社会にとっても大切なこと。
その認識が、数字によって改めて示されたのです。
2026年|女性の健康を支える企業を評価する時代へ
そして2026年4月。
女性の健康支援に取り組む企業を認定する、新しい制度「えるぼしプラス」「プラチナえるぼしプラス」が始まりました。
これは、女性活躍推進に取り組む企業を認定する従来の「えるぼし」制度に、女性の健康支援に関する基準を加えたものです。
例えば、女性の健康上の特性に配慮した休暇制度や、柔軟な働き方を利用できる制度などが評価の対象となります。
つまり、女性が活躍できる会社を考えるうえで、女性の健康をどう支えるかという視点も重要になってきたのです。
これは、大きな変化だと思いませんか?
かつては、女性自身が我慢するしかないと思われていた不調。
それが今では、企業も理解し、働きやすい環境を整えていくべき課題として扱われるようになってきました。
ただし、制度ができるだけで、すべてが解決するわけではありません。
大切なのは、その制度を利用する人も、支える人も、女性の体について正しく理解していることです。

制度が整っても、女性ホルモンの知識がなければ気づけないことがある
例えば、職場にこんな女性がいたとします。
以前は元気だったのに、最近は疲れやすそう。
仕事に集中できない日が増えた。
ちょっとしたことで落ち込んでいる。
そんな様子を見て、周囲の人はどう感じるでしょうか。
「最近、やる気がないのかな?」
「何か悩んでいるのかな?」
そう考えるかもしれません。
でも、そこに女性ホルモンや更年期の知識があれば、見方が少し変わります。
「もしかしたら、体調の変化が関係しているのかもしれない」
「何か困っていることはないかな?」
もちろん、本人の状態を勝手に更年期だと決めつけることはできません。
それでも、知識があることで、相手を理解するための選択肢が増えるのです。
これは職場だけでなく、家庭や友人関係でも同じことだと思います。
だからこそ、今、女性ホルモンについて知ってほしい
私は、女性ホルモンの知識は、特別な人だけが学ぶものではないと思っています。
なぜなら、女性ホルモンは、女性の人生のさまざまな場面に関わっているからです。
月経、妊娠、出産、更年期、そして閉経後。
女性の体は、ライフステージに合わせて変化していきます。
その変化を知らなければ、自分の体に起きていることを理解できず、不安になったり、必要以上に我慢してしまったりすることもあります。
でも、知識があれば、
「これは体の変化が関係しているのかもしれない」
「一度、専門家に相談してみよう」
「今は少し休むことも必要かもしれない」
と、自分の体に合った選択を考えやすくなります。
そして、自分自身のためだけではありません。
家族や友人、職場の同僚、お客様。
周りの女性が悩んでいるときにも、正しい知識は相手を理解する助けになります。
女性ホルモンを知ることは、自分を理解すること。そして、大切な人を理解することにもつながるのです。
女性ホルモンケアは、これからますます大切になる
女性の健康について、社会の関心は確実に高まっています。
けれど、制度を整えることと、一人ひとりの女性が自分の体について理解し、必要なケアを受けられることは、別の課題です。
だからこそ、私は正しい知識を持つ人がもっと増えてほしいと思っています。
私たちリンパシーアカデミーでも、女性ホルモンや自律神経、脳の働きなどについて学び、女性の心と体に寄り添える専門家の育成に取り組んでいます。
私たちがお伝えしている「ドクター式女性ホルモンケア」は、女性の体の変化を理解し、一人ひとりの状態に合わせてケアを考えることを大切にしています。
もちろん、施術だけですべての更年期症状が改善するわけではありません。必要に応じて医療につなぐ視点も欠かせません。
それでも、女性の健康について学び、理解し、支える人が増えることには、大きな意味があると考えています。
更年期の歴史を知って、改めて思うこと
約200年前、更年期に名前がつきました。
その後、女性ホルモンの研究が進み、医学的な理解が深まりました。
そして今、更年期は個人の問題だけでなく、社会全体で支えるべき健康課題として認識されるようになっています。
ここまで来るのに、とても長い時間がかかりました。
でも、ようやく社会が変わり始めています。
だからこそ、今、私たち自身も変わっていきたいですね。
「年齢だから仕方がない」と我慢するのではなく、自分の体について正しく知ること。
「女性だから当然」と受け止めるのではなく、必要なケアやサポートを考えること。
そして、自分だけでなく、大切な人の健康にも目を向けること。
女性ホルモンについて知ることは、これからの人生をより健やかに、自分らしく過ごすための大切な一歩です。
これからも、女性の健康について、もっと多くの方に知っていただけるよう、情報をお伝えしていきたいと思います。
参考資料
- 経済産業省|女性特有の健康課題による社会全体の経済損失
- 厚生労働省|働く女性の健康支援について
- フランス国立科学研究センター(CNRS)|更年期の歴史について
- Singhほか(2002)「A historical perspective on menopause and menopausal age」


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